すずとりんは生後半年になりました。「避妊手術」をどうするかも考えなければならないことになります。メス同士なのであまり急がなくても良い気がするのですが、保護主様との約束事でもあります。
猫の避妊手術前に知っておきたいこと
一般的に猫の飼養管理の観点からは、特段の理由がない限り、女の子には避妊手術を行うことが望ましいとされています。でも、避妊手術を行うことでどんなメリットがあり、どんなことに気を付けなければならないのでしょうか。
避妊手術のメリット
・予定しない妊娠の回避
猫が外に出る場合はもちろんのこと、室内飼育であっても他の猫が侵入したり、逃亡してしまうなど事故的な出来事が原因で、妊娠してしまうことがあります。
猫は交尾の刺激によって排卵するため、交尾をした場合かなりの確率で妊娠をします。万が一、知らないうちに外で子猫を産んでしまっていた場合には、子猫たちは、地域猫(野良猫)として殺処分の対象となってしまうこともあります。
・発情期のストレス軽減
女の子の猫は、個々に差はありますが、春から夏にかけて年2、3回ほど発情期を迎えます。その間、高い声で鳴いたり、人や物にさかんに身体をこすりつけて甘えたりなど日常の行動に変化が見られる他、興奮した状態が続く、食欲が落ちるなどの変化が起きます。
それでも交尾できるわけではないので、発情自体がストレスになる場合もありますし、それが原因で体調を崩してしまうこともあります。避妊手術を行うことで発情が起こらなくなるため、発情期に見られる発情行動や、体調の変動はなくなります。なお、猫は、犬のような生理出血はありません。
・病気の予防
避妊手術を行い、卵巣・子宮を摘出することで、それらに生じる生殖器疾患(※)を防ぐことができます。また、周期的な性ホルモンの影響を受けにくくなるため、「乳腺腫瘍(乳がんなど)」の発生リスクが下がると言われています。
※卵胞嚢腫(らんぽうのうしゅ)や子宮蓄膿症など
避妊手術のデメリット
・太りやすくなる
卵巣・子宮の摘出を行うと、ホルモンバランスが変わるなどの理由で、手術前よりも代謝が落ち、太りやすくなります。手術前と同じ量をあげていても、太ってしまうことがあるため、食事の総カロリーを減らすなど、配慮が必要です。
・手術、麻酔のリスク
避妊手術は全身麻酔で行います。手術は複雑なものではなく、どの動物病院でも日常的に行われています。また、麻酔のリスクももちろんありますが、病気の状態での麻酔とは違い、リスクはそう高いわけではありません。
その他、体質的に、稀にお腹の中の縫合糸が炎症を起こすと、「しこり」ができてしまうことがあります。場合によっては再度手術が必要になってしまうケースがあります。最近では縫合糸を使わない手術を行う動物病院も増えてきています。
・ほかの病気が増えることもある?
賛否両論があるため、まだはっきりとはしていませんが、避妊手術を行うことで間接的に増える病気もあるという報告もされています。
避妊手術をする時期は?
一般的には、はじめての発情が来る前がよいとされています。ただし、ある程度身体が成長している必要もあり、具体的には、生後6ヶ月~8ヶ月頃が適当な時期と言われています。もちろん、ひと同様、個体差があるので、猫によっては発情が早く来てしまうこともあります。時期はかかりつけの先生と相談するのがよいでしょう。
ちなみに猫の妊娠期間は63~65日くらいで、一度に3~5頭の子猫を出産するケースが多いです。
発情中や病気中には、無理にその期間に避妊手術を行うよりは、体調が落ち着くのを待ってから手術を再検討してください。発情時期には子宮の血流が増えたり、免疫が下がったりしているため、リスクが上がります。特に理由がない限りは、発情時期を避けて手術を行うことが望ましいです。
猫の避妊手術の流れは?
避妊手術をしようかなと考えたら、まずはかかりつけの動物病院で相談をしましょう。いつ手術をするかなどについて詳しく教えてくれるでしょう。また、手術の日程が近い場合には、その場で術前の検査をすることもあります。
避妊手術の当日は、絶食等の指示事項を必ず守ったうえで動物病院に連れていきましょう。避妊手術自体は、麻酔時間も含めて1~2時間で終わります。ただし、開腹をすることもあり、その日は1泊の入院になることがほとんどです。動物病院によっては、手術後に面会できるところもあります。入院する場合、初めての場所で、独りぼっちで過ごすことになるので、ストレスを感じる猫も多くいます。いつも使っているタオルやおもちゃを持っていけることもあるので、動物病院に確認しましょう。
特に問題がない場合、手術翌日には退院できます。退院時には、傷口の感染予防のため、抗生剤を処方されることが多いので、投薬方法などをしっかりと聞くようにしましょう。また、手術後には傷口を舐めないようにエリザベスカラーというエリマキのようなものをつけたり、傷口を保護する術後服を着る必要があります。その注意点などについてもしっかりと聞くようにしましょう。
一般的に、手術から7~10日後には傷口の抜糸や健康チェックのために、診察を受ける必要があります。ただし、手術の方法によっては抜糸の必要がないケースもありるので、退院時に確認をするようにしましょう。
避妊手術ってどんな手術?
避妊手術は、卵巣(左右)と子宮、または卵巣のみを摘出する手術です。卵巣を取ってしまうので性ホルモンの分泌はほぼなくなり、発情もしないので排卵・妊娠することもありません。
手術は全身麻酔をかけて行います。手術の方法は、お腹を開けて行う手術(開腹手術)が一般的ですが、最近では傷が小さくて済む「腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)」で避妊手術を行う病院も増えてきています。
開腹手術の場合、おへそのあたりを数センチ程度、縦に切開します。腹腔鏡手術の場合は、お腹の中に器具を入れる穴の2、3か所に、それぞれ3~5㎜程度を切開して行います。
手術器具や鎮痛剤など、それぞれの動物病院で少しずつ違いがありますので、気になる場合は事前に確認するようにしましょう。
なお、猫の避妊手術は、卵巣と子宮を一緒に摘出する手術が一般的です。卵巣を摘出することで子宮の病気が発生する可能性も非常に低くはなるのですが、子宮も摘出しておくことで、子宮蓄膿症や子宮内膜症など、万が一の子宮の病気も予防できます。
避妊を目的として、最小限の手術となると卵巣のみを摘出するかたちになり、若い猫の場合は卵巣のみの摘出を勧めている動物病院もあるので、個々の状態に合わせ、かかりつけの動物病院と相談しましょう。
避妊手術当日の注意事項
避妊手術を行うにあたっては、手術当日か手術の数日前に血液検査などを行い、現在の健康状態に大きな問題がないかを調べることが一般的です。術前検査は、赤血球や白血球の状態や内臓の状態をひととおり確認する血液検査の他、止血機能の検査やウィルス検査、胸部レントゲン検査などを合わせて行う場合もあります。
そして、手術前日の夜からは絶食をして、当日の朝からは絶水をして、手術に臨みます。ごはんやお水をあげていい最終時間は、事前に動物病院から指示がありますので、必ず守るようにしましょう。
当日何か食べてしまった可能性がある場合や、手術前の便や尿の様子がおかしいなど気になることがある場合は、必ず申し出るようにしてください。
また、手術の数日前からは、外出など普段と異なる行動は猫の身体に負担がかかるのでしないようにしましょう。
避妊手術にはどれくらい費用がかかる?
避妊手術にかかる費用
猫の避妊手術(卵巣子宮摘出)の費用は、日本獣医師会の調査(平成27年度)によると、およそ70%の動物病院が15,000円から30,000円の範囲です。調査は手術のみの費用となるため、別途、麻酔料や入院料、術後の投薬代やカラー代などがかかる場合もあります。
また、術前検査も別途かかります。同調査では一般的な血液検査は、4,000円から10,500円程度、入院料は2,000円から5,000円程度が回答数の多い価格帯でした。
避妊手術にかかる費用は動物病院によりかなり幅がありますが、手術の方法や、術前検査の内容、入院の有無などによる違いもありますので、費用だけでなく、どういった検査・処置を行うのかも含めて確認のうえ検討するようにしましょう。
また、腹腔鏡での手術の場合は、特別な機器や専門的な技術を必要とすることから10万円前後かかることが多いようです。
避妊手術に対して助成金が受けられることも!
住んでいる地域によっては、飼い猫であっても避妊手術を受ける際に助成金を受けられる場合があります。金額は市区町村によって異なりますが、だいたい4,000円から8,000円程度です。
助成金が出る場合でも、事前の申請が必要であったり、指定の動物病院での手術が条件であったり、年度内で支給できる頭数の上限が決まっていたりなど詳細がそれぞれ異なりますので、早めにお住まいの地域の情報を確認するようにしましょう。
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